乾燥方法
伝統的に行われている天日乾燥(天日干し)は、太陽光を利用することで設備費を安く抑えることができ、 現在でも広く利用されています。しかし天然の太陽光を利用するため、天候に左右されやすく品質が安定しないことや 紫外線による品質の劣化を招きやすいなどの理由から近年では機械を利用した乾燥方法を利用することが増えてきました。
天日乾燥法
天日乾燥(天日干し)太陽光の輻射熱を利用して水分を蒸発させる乾燥法。大掛かりな設備を必要としない、 一度に大量に乾燥できるなどの利点があり、世界的に広く利用されています。
その反面、天候に左右されやすく悪天候時には乾燥を行うことができない等の欠点があり、品質が安定しない等の 欠点もあります。また、太陽光が強すぎる夏場等は紫外線による成分変化や、高温による品質低下など の理由により、国内ではあまり利用されなくなってきています。
しかし、欠点ばかりではなく機械乾燥法と比較した場合、旨み成分の量に違いはないものの、乾燥過程で旨み成分が 魚の表面に集まるため、より旨みを強く感じるという研究結果もあり、適切に管理すれば現在でも有効な乾燥方法といえます。
冷風乾燥法
現在、魚の干物製造で最も広く利用されている乾燥方法です。外気温より冷却(15℃~35℃)除湿(相対湿度20%前後)空気を乾燥室内で循環させて水分の蒸発を促します。 相応の設備を要するため、運転費はかかりますが、 天候に左右される事も無く、紫外線の影響も受けない等の利点から 製品の仕上がりは天日乾燥や後述する温風乾燥法に比べて良く 現在の干物生産において最も広く利用されている乾燥方法です。
温風乾燥法
室温~50℃程度の温風を原料に送って水分を蒸発させる乾燥方法。短時間で干すことが出来るため大量生産が出来るものの、 温度が高いため表面が変質しやすく、外観は悪くなります。そのため、一部の低価格品を除いて一般的な干物の生産に利用されることは少なくなっています。
文化干し(灰干し)
食品を透水性多孔質セロファンで包み、乾燥した灰に埋めて脱水する乾燥方法。 蒸発による乾燥方法とは原理的に異なり、水分子の拡散移動を利用した乾燥方法のため セロファンの孔径により水分子とともに取り除かれる成分に違いが出てきます。 通常はアンモニア等臭みの原因となる成分は透過し、アミノ酸等の旨み成分は透過しない孔径のセロファンを 使用します。空気や太陽光に触れることが無いため成分や外観の変質が起きにくく品質の良い製品を作ることが出来ます。 近年は乾燥灰に変わってシリカゲル等を利用することも多くなっています。
一般に干物の生産で利用される乾燥法は上記の4つ及びその改良型が主です。 干物の生産とはあまり関係ありませんが、その他の乾燥方法を以下に示します。
焙乾法
蒸篭に乗せた食品を焙乾炉に乗せて火床の熱で乾燥させる乾燥方法。高温の熱に晒されるため比較的短時間で 乾燥できる。同時に煙で薫蒸することで貯蔵性を高め、香り付けも行う。基本的には燻製作りと同じ工程を行いますが 焙乾法では燻製と比べて香りや比較的弱くなります。主にかつお節等の節類の製造に利用されています。
熱風乾燥法
高温(400℃~500℃)の熱風を吹き付けて水分を乾燥させる。主にフィッシュミールの製造に利用されています。
凍乾法
寒冷地で夜間と、日中の温度差を利用して行う乾燥法。夜間の低温により凍結し、日中の温度上昇により融解させて水分を流出させます。寒天や高野豆腐等の製造に利用されています。
真空乾燥法
減圧下で水分の蒸発速度が大きくなる現象を利用した乾燥方法。 食品は低温に保たれ、また酸素と触れることも無いため品質の良い製品が出来ますが、設備が高価で運転経費も高くなります。
真空凍結乾燥法
高真空下で凍結させた食品の水分を昇華させる乾燥方法。 食品は凍結状態を保ったままなので、成分の変質を抑えることが出来、 特に香り落ちや色落ちをしにくい等の利点がありますが 設備が非常に高価であり、また乾燥効率が悪いため、特殊な用途にしか利用されていません。
噴霧乾燥法
液状の食品を高温(150℃前後)の熱風中に噴霧して乾燥させます。インスタントコーヒーや粉ミルク等の製造に利用されています。