食品の保存性を高めるには、水分を減少させればよい事は広く知られていますが、単純に水分を減少させれば 保存性が高まるわけではありません。
食品に含まれる水分は、たんぱく質や糖類と強く結合した結合水と、束縛されずに自由に運動できる自由水にわけることが出来ます。 この内、微生物が活動するときに利用することが出来るのは主に自由水です。 つまり、食品の保存性を考えるときは、食品の水分すべてを考えるのではなく、自由水を中心に考える必要があります。
水分活性 water activity(Aw)とは、閉じた系において、純水の水蒸気圧をP0、食品の水蒸気圧をPとしたとき、
水分活性(Aw)=P/P0 であらわし、その食品中の水分子の自由度をあらわします。
微生物はその活動において水分を必要とする為水分活性が低下するほど増殖が出来なくなり、 ある一定のレベル以下になると全く増殖が出来なくなります。 しかし、微生物の種類によっては普通の微生物が活動できないような低い水分活性でも増殖するものも存在します。
微生物 | 最低水分活性 |
---|---|
一般的な細菌 | 0.90 |
一般的な酵母 | 0.88 |
一般的なカビ | 0.80 |
好塩性細菌 | 0.75 |
耐乾燥性カビ | 0.65 |
耐浸透圧性酵母 | 0.61 |
表の通り、細菌は一般的に乾燥に弱くAwが0.90以下になると殆どの細菌は活動できなくなります。次に乾燥に強いのが酵母でAw 0.88迄 最も乾燥に強いのが耐浸透圧性酵母でAw 0.61まで活動できます。この表から水分活性(Aw)を 0.60以下に下げることが出来れば微生物は活動 出来なくなることがわかります。
主な食品中の水分活性は以下の通りです。
食品名 | 水分活性 |
---|---|
野菜、果物 | 0.99~0.98 |
鮮魚 | 0.99~0.98 |
食肉 | 0.98~0.97 |
ソーセージ | 0.83~0.78 |
ジャム | 0.79 |
味噌 | 0.74 |
しょうゆ | 0.76 |
ビスケット | 0.33 |
鮮魚、野菜、肉等の生鮮食品は水分活性が高く、砂糖や塩等を含む加工食品は比較的水分活性が低くなっています。 中にはビスケットなどのように水分活性が極めて低い物もあります。
次に主な干物(乾製品)の水分活性を示します。
品名 | 水分活性 |
---|---|
開きアジ | 0.96 |
しらす干し | 0.87 |
いわし生干し | 0.80 |
干しエビ | 0.64 |
煮干いわし | 0.58 |
近年の傾向として消費者の嗜好に合わせて、より塩分を控えたり、乾燥を抑えた一夜干しなど、 より生魚に近い干物を生産する業者が増えてきています。干物生産の目的が かつての保存性を高めることから、食味を向上させる事に移ってきています。 この傾向は今後も続くものと思われ、その取り扱いは干物と言えども 鮮魚と同様に冷蔵(冷凍)保存し、出来るだけ早く調理するなどの注意が必要です。